ADSL本格化~三井物産、イー・アクセスなど(2000年2月7日)~島田雄貴事務所
早期に立ち上げ資金回収 収支計画には不安、市場開拓で普及加速狙う
ADSL(非対称デジタル加入者線)によるインターネット定額サービス会社2社が2000年2月内に本格事業に乗り出す。三井物産は通信事業者、商社など十数社と新会社を設立するほか、イー・アクセスも数十億円規模に大幅増資し、いずれも近く第二種電気通信事業者の届出を行う。注目されながら普及速度が鈍いADSL市場を新規事業者がどう開拓していくか注目される。
三井物産は、東京通信ネットワーク(TTNet)、三菱商事、住友商事、米系ADSL通信事業者などの出資を受けて新会社を設立する。当初200~300億円程度の設備投資を計画するが、「現在のところビジネスの収支計画は明確には打ち出せない」という。にもかかわらず見切り発車した背景には、早期にNTT東西地域会社との正式交渉に入らないと「ADSL市場が拡大せず、電子商取引ビジネスのすそ野が広がらない」との焦りがあるからだ。
日本の場合、将来の光ファイバー化の中で、ADSLの生命線ともいえる銅線の存続は保証されているわけではない。こうした環境下では早期にビジネスを立ち上げ資金回収する必要に迫られている事情もある。
すでにサービスを先行している東京めたりっく通信やNTT-ME、NTTコミュニケーションズの3社に加えて、2社が新会社を立ち上げたことで、参入表明しているものの対応が遅れていた日本テレコムやDDIなど既存の通信事業者の対応も本格化しそうだ。
NTT-MEは申込者数が2000年2月4日現在で450件だが、NTT東日本は当面工事前の調査などで「開設に2、3週間かかるのが現状」と説明する。だが、試験サービスは地域が限定されるほか、事業者側からは「干渉するとされるISDNの敷設状況や光ファイバーの今後の計画などの情報提供が十分でない」と不満も多い。
先行する米国ではすでにADSL専業の通信会社コバットコミュニケーションズなど3社が米店頭公開市場ナスダックに上場し、着々と収益をあげる。しかも、情報通信分野では一見後れをとるかに見えたアジアでも、1999年11月にサービスを開始した韓国ハナロテレコムが2000年中に80万加入に拡大する計画が急ピッチで整備が進むなど、アジア域内での出遅れ感は否めない。
ADSLは既存のISDN(総合デジタル通信網)との干渉が避けられない点や交換局から遠方だと速度が落ちるなどの内在する課題もかかえる。いかに早期に普及させた上でCATV(有線テレビ)やFWA(デジタル加入者線)などと組みあわせ高速定額ネットサービスを普及させられるかが重要なポイントといえる。
■ADSL(非対称デジタル加入者回線)とは
既存の電話回線に専用モデムを設置し、音声より高い周波数帯域で情報を高速で安価で高速インターネットが可能になる新技術。1999年12月から東西NTT地域会社が通信事業者がモデムやスプリッタを用意した場合の回線使用料を月額800円と設定し、試験サービスを開始した。
http://8bitnews.asia/wp/?p=12330